日経平均株価 と NYダウ は同じ値動きになる!?

日経平均株価とNYダウは同じ値動きになるのか
前回の記事(下記リンクを参照)では、日経平均株価はNYダウと為替(ドル円 外国為替相場)で決まるという経済学者のコメントを紹介しました。そして、実際に紹介されていた計算式を使って日経平均株価を計算し、理論値と実測値がかなり近い値になることも分かりました。
少し要素を分解して、今回は「日経平均株価」と「NYダウ」の関係性をもう少し詳しく見ていきたいと思います。具体的には、日経平均株価とNYダウが同じ値動きをするのかどうかを検証します。
なお、為替については、また別の機会に分析します。
どの数値を使って値動きを比較するか
日経平均株価の市場は東京にある「東京証券取引所」、NYダウの市場はニューヨークにある「ニューヨーク証券取引所」と「NASDAQ」です。東京とニューヨークで時差があり、それぞれの市場が同時に開いていません。
このため、値動きを比較するには「今日の株価は○○円である」と一つの値に決めなければなりません。したがって、何らかの代表値を用いる必要があります。
代表値を考えるにあたって、日経平均株価やNYダウといった株価指数では以下の値がよく使われるため、この中からどの値を使うかを決めることになります。
- 始値(はじめね):ある期間の最初の売買価格
- 終値(おわりね):ある期間の最後の売買価格
- 高値(たかね):ある期間の一番高い売買価格
- 安値(やすね):ある期間の一番安い売買価格
株価指数で出てくる主な4つのデータのうち、どの値を見るのが適切なのか、考えてみます。
日経平均株価の
(1)始値/(2)終値/(3)高値/(4)安値の相関係数
日経平均株価の「(1)始値/(2)終値/(3)高値/(4)安値」の4つのデータのうち、2つの組み合わせ全パターンの相関係数を見れば、お互いに関係し合っている数値かどうかが分かります。
組合せは、以下の6通りです。
(1)始値-(2)終値 、 (1)始値-(3)高値 、 (1)始値-(4)安値
(2)終値-(3)高値 、 (2)終値-(4)安値
(3)高値-(4)安値
同じデータ同士(1)-(1)、(2)-(2)、(3)-(3)、(4)-(4)は、全く同じ変化するため、関係性を分析しても意味がないため省略します。
2002年4月1日から2025年4月28日(取引日数5,461日)の、毎日の日経平均株価の4つの指標で相関係数を見たところ下記の通りとなりました。
【出典】日経平均株価:
https://www.nikkei.com/markets/worldidx/chart/nk225/
※散布図内の赤い線は、散布図の全ての点の中間を通る線「回帰直線」です。
- (1)始値-(2)終値:0.9997
= 強い正の相関

- (1)始値-(3)高値:0.9999
= 強い正の相関

- (1)始値-(4)安値:0.9998
= 強い正の相関

- (2)終値-(3)高値:0.9999
= 強い正の相関

- (2)終値-(4)安値:0.9999
= 強い正の相関

- (3)高値-(4)安値:0.9998
= 強い正の相関

相関係数は、いずれも+1に限りなく近い値が出てきているため、4つのデータの組合せ全てで同じ傾向があることを意味しています。
アメリカ市場(NYダウ/S&P500)の場合
アメリカ市場のNYダウやS&P500でも同じような傾向でしょうか? 始値と終値だけでも確認してみます。
【出典】NYダウ/S&P500
https://jp.investing.com/indices/us-30-historical-data
- NYダウ 始値/終値の相関
= 強い正の相関

- S&P500 始値/終値の相関
= 強い正の相関

日経平均株価だけではなく、アメリカ市場のNYダウでもS&P500でも、始値/終値は強い正の相関があります。NYダウとS&P500の高値と安値も含めて分析しても、日経平均株価と同じ傾向となるでしょう。
日経平均株価とNYダウの相関係数
上記の相関係数を踏まえると、始値/終値/高値/安値、全てが同じ傾向を示すため、どの値を代表値に使っても問題ないとなります。始値が高ければ、終値も高く、高値も高く、安値も高い、となるためです。
では本題に戻って、日経平均株価とNYダウの相関係数を見てみましょう。始値/終値/高値/安値のどれを使っても良いということなので、1日の取引結果と言える「終値」が一番納得感があると思うので、終値で比較して見ます。
日経平均株価 終値(横軸) / NYダウ(縦軸)
相関係数0.9625
=強い正の相関

相関係数が約0.96ということで、日経平均株価とNYダウは強い正の相関があると言えます。見事に右肩上がりに上がっています。
ただし、日経平均株価とNYダウに何らかの因果関係があるいう事ではありません。
そもそも、短期的には経済循環で不況と好況を繰り返すものの、長期的には経済成長を続けるというのが自由主義経済の傾向です。
日経平均株価もNYダウも、長期的な経済成長の結果として相関があるように見えているだけだとしたら、日経平均株価とNYダウには因果関係は存在しないことになります。下記のような関係です。

原因は「長期的に経済成長が続く」で、結果が「日経平均株価」と「NYダウ」であれば、共通の原因を持つ結果の数値は相関することになります。
この傾向を見るために、日経平均株価とNYダウの散布図に、時間軸の要素も入れてみます。散布図の「点の色」を2年ごとに12%ずつ徐々に濃くしていきました。

2010年より前は左下に集まり、2010年以降は中央付近、2020年以降は右上にたくさん点が打たれています。
「長期的な経済成長」によって、日経平均株価もNYダウも散布図の右上の方に行っているという可能性もありそうです。
前日からの変化の相関係数
さらに踏み込んで、終値が前日から上がったのか、下がったのか、変化率が日経平均株価とNYダウが同じ傾向なのかを分析してみます。
もし日経平均株価とNYダウに関係性があるとしたら、「前日差」も同様に相関すると思います。
日経平均株価 前日差(横軸) / NYダウ 前日差(縦軸)
相関係数0.0279
=相関なし(無相関)

日経平均が前日から上昇したからといって、NYダウが上がることはないようです。
この傾向は、少なくとも「1日」という単位で見た場合には、日経平均株価とNYダウの上がり下がりの傾向に関係性があるとは言えないことを意味しています。
まとめ
日経平均株価 終値とNYダウ 終値は、強い正の相関があることが分かりました。ただし、これだけは長期的な経済成長によって相関しているだけの可能性があり、日経平均株価とNYダウが関係し合っているとは言い切れません。
また、「日経平均株価の前日差」と「NYダウの前日差」で相関するか確認したところ、これは無相関でした。日経平均株価が前日比で上がったからといって、NYダウも前日差で上がるとは言えないことが分かります。
ただし1日単位という細かい粒度では、ランダムウォークする可能性もあり、全体の傾向を表していない可能性もあります。さらに踏み込んで、1ヶ月単位など少し長めの期間で上昇傾向・下降傾向が相関するのかどうか、今後分析していきたいと思います。