日経平均株価はNYダウと為替だけで決まる!?

日経平均株価は NYダウ と 為替 で 97%が決まる?
経済学者の高橋洋一先生は、以下の動画で「日経平均株価は、NYダウと為替で97%が決まる」とお話しされています。(5分30秒~)
キーワードを改めて簡単に整理します。
日経平均株価
日本経済新聞社が計算して出している日本の代表的な株価指数。
東京証券取引所のプライム市場(優良企業が上場する市場)から、代表的な225銘柄を選び、平均値を計算したものです。
三井住友銀行:日経平均株価とは
https://www.smbc.co.jp/kojin/toushin/gimon/start12
NYダウ
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が出しているアメリカの代表的な株価指数。
ニューヨーク証券取引所やNASDAQといった市場から、アメリカ経済を牽引する代表的な企業30社が選ばれ、平均値を計算したものです。
三井住友銀行:NYダウとは
https://www.smbc.co.jp/kojin/toushin/gimon/start13/
為替
ここでは、日本円とアメリカドルの外国為替(ドル円 為替相場)を指しています。
日本円からアメリカドルに通貨を交換するとき(またはその逆も)の比率になります。1ドル=100円なら、アメリカドルの1ドルを手に入れるためには、日本円で100円が必要だということです。
日本銀行:為替相場(為替レート)とは何ですか?
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/intl/g17.htm
NYダウと為替から日経平均株価を求める計算式
動画内では、以下の計算式で日経平均株価が計算できる解説しています。
nikkei=-7171+0.68*DowJ+111*JPY/USD
式を分かりやすく分解します。
- NYダウの価格 × 0.68
- ドル円の為替相場 × 111
- -7,171 (※マイナスの値)
この3つを全部足せば、理論的な日経平均株価が出てくるということになります。
試しに、この記事を記載している時点の「NYダウ」と「ドル円 為替相場」で、「理論上の日経平均株価」と「実際の日経平均株価」を比較してみます。

上記表の「NYダウ」「ドル円相場」は下記より引用
出典:日本経済新聞社「世界の市況」
https://www.nikkei.com/markets/marketdata/top/
上記の通り、高橋先生が記載されていた計算式を使って「理論的な日経平均株価(理論値)」を計算したところ 37,021円 となりました。一方で、「実際の日経平均株価(実測値)」は37,503円です。理論値と実測値の誤差比率は98.7%です。
たった1日の比較だけですが、日経平均株価は「NYダウ」と「ドル円為替相場」のたった2つのデータだけで、「実際の日経平均株価」に近い値を計算することができています。
計算式から分かること
分解した3つの計算式について、もう少し詳しく見ていきます。
1つ目の計算式「NYダウの価格 × 0.68」
「NYダウの価格(単位:アメリカドル)」に「0.68」を掛け算しています。NYダウの数値よりも日経平均株価の数値の方が、3割ほど低い値(100 – 68 = 32)になるということです。
【注意1:NYダウと日経平均株価の価値を比較しているものではない】
「日経平均株価の価値が3割低い」という意味ではありません。日経平均株価は「日本円」とNYダウは「アメリカドル」という異なる単位で計算しているので、金額の価値を意味しているものではありません。
【注意2:因果関係ではない】
これは因果関係を表しているものではありません。いずれ分析してみたいと思いますが、そもそも日付変更線の関係で、同じ日付の場合には日本の市場(東京証券取引所)の方が時間的に早く取引されます。したがって、もし「NYダウが上がれば(原因)、日経平均株価が上がる(結果)」という因果関係で説明しようとしても、日経平均株価の方が早く出てくることから、「結果」が「原因」よりも先に起きていることになり、時間軸が正しくないことになります。
いずれにしても、「NYダウ」と「日経平均株価」の数値には関係性があり、どちらも同じように変化する傾向があるということです。「日経平均株価が上がり」、「NYダウが下がる」ということは起きづらいことを意味しています。
2つ目の計算式「ドル円の為替相場 × 111」
「ドル円の為替相場」に「111」を掛け算しています。ドル円の為替相場は、基軸通貨であるアメリカドルを基準にした「1ドルあたりの日本円の交換比率」です。
円高と円安の考え方についてはここでは述べませんが、この計算式の結論だけ言えば「円安になる方が日経平均株価は高くなる」ことを意味しています。
「円安が良いのか/円高が良いのか」は、それぞれの立場や見方によって異なるかと思いますが、少なくとも「円安は日経平均株価にはプラス」であると言えます。
3つ目の計算式「-7,171」 (マイナスの値)
「NYダウ」と「為替」の値に関係なく、固定値(定数)として日経平均株価の方がNYダウよりも数値が低くなることを意味しています。
計算式についての補足
今回の計算式を見ると一見複雑そうに見えますが、計算式の構造は中学生で習う一次関数「y = ax + b」と同じです。詳しく見てみましょう。
nikkei=-7171+0.68*DowJ+111*JPY/USD
この一次関数の「ax」に相当するのは、式後半の「0.68*DowJ+111*JPY/USD」の部分です。計算式では「DowJ」と記載されている箇所はNYダウです。また計算式では「JPY/USD」と記載されている箇所は「ドル円 為替相場」です。
そして、一次関数の「b」に相当するのが、「-7171」の部分です。
一次関数は、平面上で「直線」を表現できます。NYダウと為替が「a=傾き」を表し、固定値(定数)の「-7171」が「b=切片」です。
なぜ一次関数が出てくるのか、いずれ解説する記事も用意したいと思います。
NYダウと為替で「97%説明できる」について
動画内で触れている「NYダウと為替で97%説明できる」という点について考えてみます。
これは動画内で計算式と一緒に記載している「相関係数0.97」を基にしていると思われます。
ただ、相関係数は単位がつかないのが一般的な理解です。このため、動画内で97%説明できるものとして「パーセント」という単位を付けて説明力を表現している点には疑問が残ります。
一方で、相関係数と似たような数値で「決定係数」があります。決定係数は「寄与率」とも呼ばれ、「○%説明できる」と表現する場合があります。
ただ、今回は「相関係数」と記載されているため、なぜ高橋先生が97%説明できると表現されているかは分かりません。
この点について、もし統計学の専門家の方がいればご教授いただきたいものです。
まとめ
「日経平均株価は、NYダウと為替のたった2つの要素で説明ができる」という結論は、少し驚きがあります。
なぜなら、日経平均株価は、日本の株式市場(東京証券取引所 プライム市場)に上場する225銘柄を基にした数値です。株価は、株式会社の企業価値そのものであるため、上記の結論は「日本の株式会社の企業価値(の平均)は、NYダウと為替だけで決まってくる」と言えることになります。
本当にこのような傾向があるのか、今後、日経平均株価・NYダウ・為替の日別の推移を使って、さらに深掘り分析をしていきたいと思います。